塩と肥満と高血圧と


   外来診療のさい、「塩分は控え目に」とか「体重を減らすように」などと言われる  
  高血圧の患者さんは、さぞかし多いことだろう。耳にタコの出来るほど聞かされる  
  この注意を、「そんなこと聞いてないよ」と言う患者さんがいれば(残念ながら  
  いるのである)、その方はよほどの健忘症か、自己本位の御都合主義者か、  
  あるいは逆にヤブ医者にかかっているかであろう。それがすべてではないが、  
  ことほど左様に塩分と肥満は高血圧との関わりが密なのである。しかし外来で  
  その理由を説明すると、ゆうに15分はかかってしまう。だから私は先着3名様と  
  称して、実際に図を書いたりして説明する患者数を制限している。いけないことで  
  あるが止むを得ない。  
   そもそも高血圧を始め、多くの心・血管疾患は無症状のことが多く、しのび足で  
  やって来る。「全く症状はないのだ」と胸を張る患者さんは多いが、およそ  
  慢性に経過する疾患の場合、自覚症状が歴然と前面に出て来るようでは、  
  早い話、葬儀社へわたりをつけておいた方がいい。そのように私は極端なことを  
言う。これもあまり感心出来る話ではないが、どうも皆さん、あまりにも無関心すぎ、
ただ薬さえ飲んでいればといったように見える。大東亜戦争末期に倒れた
ルーズベルト米国大統領はひどい高血圧症で、最高血圧は300mm水銀柱以上、
最低血圧も130〜150mm水銀柱であったというが、少々ぼけ、また頭痛も
あったらしいのに、ヤルタ会談までやってのけた。彼の血圧に比べると当今の
高血圧患者さんの血圧など庇の河童であるが、しかしその河童、放っておくと
ルーズベルト同様、必らず「死に到る病い」だから、早くから対処しておかねば
ならぬ。因にルーズベルトは脳溢血で倒れ、おそらく脳出血のため、3時間で
絶命した。この脳室出血がなければ、脳出血例の命は24時間はもつはずである。

塩と高血圧
肥満と高血圧
理屈道理にはいかない例

霞が関ビル診療所
坂夲 ニ哉